着物・呉服屋のイメージを聞くと多くの方は「敷居が高そう」といった答えかもしれません。
着物・呉服業界の仕事に興味を持っている方でも「しきたりやノルマが厳しいのでは…?」と不安を抱える方もいるのではないでしょうか。
この記事では、着物・呉服業界の近年の業界動向をまとめています。
この仕事のやりがいや、どのような人に向いているのかを合わせて解説していきます。
「着物・呉服業界って実際のところはどうなの?」という疑問を深掘りしてみていきましょう。
着物・呉服業界には、どのような企業がある?
代表的な呉服屋の企業には、数百年続く老舗呉服店、呉服販売店のほか、百貨店があります。
日本の大手百貨店は、元々呉服屋から転身したものであるため、現在も豊富な種類の着物・帯・和装小物を取り揃えています。
着物を取り扱う有名な企業には、着物の専門店のほか、商社・企業の呉服関連事業などがあります。
着物・呉服業界の現状
一昔前まで、着物は日常着として着用されていました。
現在では、ハレの日や冠婚葬祭など、フォーマルな場でしか着用する機会が無いという方も多いのではないでしょうか。
着物の主要顧客であるシニア層の高齢化に加え、若年層の着物離れによって市場は縮小化し、呉服屋の再編や衰退が続いています。
更には、新型コロナウイルス感染症の影響により催事の制限や、結婚式、記念パーティー、お祭り、ハレの場が激減。需要の落ち込みに厳しい逆風にさらされています。
近年の業界動向
着物・呉服業界は、古い体質が残る保守的な業界だと思われがちですが、それを覆すさまざまな取り組みが行われています。
若い世代の関心の高まり
経済産業省が公表した「和装振興研究会 報告書 (2015年)」によると、20、30 代の着物の着用意向は高く、若い世代も着物に興味を持っていることが分かります。
そのため、着物の1世帯当たりの購入額は長期的に減少傾向にありますが、成人式の振袖や卒業式の袴など和装のレンタルは上向きに推移しています。
企業の新しい取り組み
若い女性も着物に関心を寄せているとはいえ、「着物は価格が高くて買えない」「気軽に入れるお店がない」「着付けができない」といった着物離れの要因が幾つかありました。
そこで、呉服屋や和装を取り扱う企業では、20代から40代の層に向けて、手にしやすい価格でカジュアルな要素を取り入れたサブブランドの展開に注力しています。
着物に慣れ親しんでもらうため、各企業が積極的に着付け教室を開催したり、若い世代に歩み寄って新しい取り組みを行っていると言えるでしょう。
また、「着物を着る機会がない」「着物を着ていくお出掛けの場がない」といった点は、行政と地域で、地方創生と結びつけた取り組みが進められています。
新たな着物文化の創出
世界中でサステナブルな社会の実現に向けて、リサイクル・シェアの動きが高まっていることを背景に「アンティーク着物」「リサイクル着物」に注目が集まっています。
大正時代から昭和時代に着られていた着物を指し、レトロ着物とも呼ばれています。古着の要素だけではなく、ビンテージ品として一つの地位を築いていると言っても過言ではありません。
趣味として着物を楽しむ方も増え、ハレの日の装いだけではなく身近なファッションとして着物を楽しむ方が増えています。
近年では観光地を着物で散策する外国人や若い女性をよく目にするようになりました。
着物・呉服業界にはどんな人が向いている?
お客様と関係を築くことが得意な方
着物の販売では、審美眼を活かした提案が求められることもあれば、成人式の振袖選びでは、お嬢様と近い目線で流行りの提案を行うこともあるでしょう。
幅広い年代のお客様と信頼関係を構築していく必要があります。
接しやすい雰囲気の方や、相手を尊重して意図を汲み取ることが得意な方は向いているでしょう。
頑張りを認めてもらいたい方
お店によって特色が大きく異なりますが、目標達成に応じてインセンティブ制度や報奨金制度を設けているお店があります。
成果に比例して収入が増えるので、頑張りを認めてもらいたい方には魅力の一つでしょう。
一方「一切ノルマはありません」というお店もあり、その場合はコーディネートに専念しやすい環境でしょう。
お店の雰囲気であったり、社風を確認しておくことが大切です。
着物・呉服業界で働くやりがい
人生の大切な節目に立ち会える
普段から着物を着用する方もいますが、一般的には、七五三・成人式・結婚式など、人生の大切な節目に着物を着用することが多いでしょう。
節目のお祝い事は、本人にとってもその家族にとっても、人生の一大イベントです。
そのような特別な記念日に寄り添い、たくさんの笑顔に出会えることは、やりがいに満ち溢れているでしょう。
ハレの日を迎えるお客様が美しく輝いていく姿を見届けられること、家族の繋がりを再認識する機会に立ち会えることはこの仕事の醍醐味です。
直接ありがとうと言ってもらえる
人から直接感謝される職種は、人のためになる仕事だと実感しやすいです。
例えば、成人式でお嬢様が着用される振袖は、およそ1年近くかけてお手伝いをしていきます。
着物も購入して頂いたあとアフターフォローが欠かせません。
お客様と長くお付き合いを重ねていくことで信頼関係を築いていくことができるでしょう。
文化を伝承できる
革新的な新しいモノを作ることも大切ですが、日本古来の古き良き文化を受け継いで伝承することも大切です。
着物を通して次の世代や、海外へ日本の文化を伝える担い手になることができます。
作法やおもてなしのスキルを身につけることができる
着物にふさわしい立ち居振る舞いや所作を身につけることで、外見の美しさだけではなく、内面から凛としたエレガントな存在になれるはず。
美意識が高まることで、自らも美しく磨かれていくことでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
着物・呉服業界の動向と、着物に関わる仕事のやりがい、どのような人が向いているのか解説しました。
新しい需要の開拓によって、着物の価値が多様化しています。
着物離れが進む一方で、現在ではSNSで着物を楽しむ姿の写真が数多く投稿されていたり、動画で着付け方法を学べるなど、着物文化と親しみやすくなりました。
着物・呉服屋も一昔前のイメージと異なり透明性が高くなり、現代のライフスタイルにあわせて進化しています。
少しでも着物の仕事に興味を抱いた方は、チャレンジしてみてください。